こちらのリング。
後で作りについて書こうかなと思っている間に、リピーター様にご注文いただきましたが…
一応書こうと思っていたことを書きたいなと思いましての追記です。
スターサファイアの脇のダイヤモンドを留めている爪のあたりの地金部分。
和彫りで凹ませています。
地金から爪を起こすため
というのではなく、別の部分を何箇所も凹ませていますから、装飾ですね。
アームもぐるりと艶消し加工されていますので、
地金の鏡面光沢を減らすという意図があるように思います。
それと、もう一つの意図がありまして、それは、ダイヤモンドをより輝かせるため。というものです。
お、この職人さんは、ダイヤモンドの周囲を削ることで、装飾と、輝きを取り入れますね!
と、ジュエリーと対話するというか、職人さんと会話するというか、そういう楽しみ方があります。
ダイヤモンドは、側面や、裏側からでも光を取り込むことでより輝きますが、
このリングを作った職人さんは、ダイヤモンドを輝かせるためにもっとすごい事を行っています。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、
・・・わかります??
黄色の〇で囲ったところです。
唐草の根元の方に穴を開けています。
ダイヤモンドと唐草をより近づけるため、そして光を取り込むための穴・・・
このリングを見ても、ほとんどの人が気づかないであろう穴ですが、
その穴に気付き、何故穴を開けたのかの意図を読み解く事が出来た時に心が震えます。
手間を惜しまず、より良いものを・・・
その気持ちが伝わってきます。
現代ジュエリーの多くが(もちろん全てではありませんよ)つまらない、退屈だと感じてしまうのは、
何故その形なのか・・・
を、考えていったときに、
あぁ、こうやって工程を減らしているんだな。
とか、こうやってコストを抑えているんだな
とか、そういう部分まで目についてしまう部分が多いからです。
それは、コストを抑えて提供するという意味では、技術の進歩ではあるのですけどね…
昔のジュエリーは、手作りのものが多く残っており、作り手一人一人の創意工夫だったり、癖だったりが残っていますので、
ジュエリーと対話するいう楽しみが詰まっています。
デザインがカワイイ。
それもありだと思いますが、
作り に注目していくと、
ジュエリーの奥行きを感じ、よりジュエリーを楽しんでいただけるかと思います。